逃げて逃げて逃げ続けた日々
義両親から『(夫)のこと、よろしくね』と言われた後、私は彼らのことを避け続けた。そんなに困っている人が居るのに何もしないで逃げ続けるなんて、
「人としてどうなの?!」
と言う人もいるだろう。
だけど、それ以外の方法が思いつかなかったのだ。
少しでも関わってしまったら、恐らくどっぷりと深みにはまってしまう。
こちらにその意思が無くても引きずり込まれてしまうのが怖かった。
相手が何を言っても自分にその気が無ければ逃げられるはずだ。
普通ならそう思うかもしれない。
でも、それは甘い考えだ。
一度でも彼らと関わったことのある人ならきっと分かってくれると思う。
あの押しの強さに太刀打ちできるのは、ごく一部の限られた人たちだけなのだということを。
押しに弱いと自負する私には到底無理な話だった。
真正面から強く言われたら断りきる自信が無い。
だから、押し切られないように逃げ続けた。
逃げている時って、何となく後ろめたさを感じる。
悪いことをしているわけではないのに、夫に対して申し訳ない気持ちも出てきた。
それでも、過去の失敗から学んでいたので心を強く持って拒み続けた。
一定の距離を取るように注意し、密な連絡は取らない。
そう決めた。
多分夫は寂しさを募らせていったのだと思う。
要求は徐々にエスカレートし、義両親からの圧力も強まった。
なかなか受け入れない私にイライラしているのも伝わってきた。
夫が仕事を休みがちに・・・
夫はせっかく再就職できた仕事を休みがちになった。
心が参ってしまったと言われれば、その通りなんだろうけど。
私には厳しいくせに自分には甘いんだな、なんて思った。
本当は続けて欲しい。
だけど、こちらへの要求が強まるよりは良いのかも。
心の中で色んなことを天秤にかけながら、その時々でどちらの方がまだマシなのかを考えた。
私たちにとって、夫と離れて暮らすこと以上に大事なことは無かった。
それだけは死守しなければと心に決めていたので、夫の思惑通りになることは無かった。
夫だって離れてから多少は苦労もしたはずだ。
少しは人の痛みが分かるようになったかもしれない。
もしそうなら、私たちにもほんの少しでも優しくしてくれるかな。
勝手に期待して、想像の中の夫がちょっとだけ良い人になった。
実際は・・・。
拒み続ける私にイライラして、義両親に当たり散らしていた。
自分の思い通りにならないとキレるところも相変わらずだった。
子どもだって知っているのに。
全てが思い通りになるわけじゃない、ということを。
それなのに、そんな簡単なことが夫には分からないようだった。
これが分別のある大人のやってることなんだから、本当に質が悪いとしか言いようが無い。
最後の砦である義両親も、そんな息子を持て余し始めていた。