連絡もつかず・・・
お義兄さんが生活費を渡すために自宅に戻った日、かなり激しい言い争いがあった。奥さんはそれまで通りお金を受け取るのが当然だと思っていたようだが。
休職中のお義兄さんの収入はかなり減っていた。
それで、休職に入る前の6割程度を持参したらキレられた。
正直なところ、それでも十分な額だと思う。
だって、我が家の3人分よりも大分多いんだから(笑)。
ローンや光熱費はお義兄さんが別で払っていた。
本当の意味での生活費だけなので、足りないことはないはずなのに。
封筒の中身を見て怒りを爆発させた奥さんが、
「これっぽっちで、どうやって生活すれば良いんだよ!」
などと言い、不穏な空気が流れた。
自炊もせず、毎回外食だったし。
実際にお金が掛かっていたとは思う。
でも、無い袖は振れないのだから、少しくらい協力してあげれば良いのに。
奥さんの態度を見ていると、意固地になっていると感じることも多かった。
その頑な態度に対し、嫌気が差していたのはお義兄さんだけでは無い。
義両親もはっきりと拒絶反応を示していて、
「もう口もききたくない」
と言っていた。
その日、言い争いをした後でもやはり奥さんのことを気に掛けていたお義兄さん。
数時間後に携帯を鳴らしたが出なかった。
怒っている時に出ないのはよくあること。
また後で掛け直そうと、1時間おきに何度か電話。
それでも出なくて、急に不安になり、再度自宅へと向かった。
そうしたら部屋には誰も居なかった。
出かけているだけかもしれないけれど、以前にも喧嘩した後に行方不明になったことがあったので『もしかして・・・』と考えたようだ。
義実家に戻ったお義兄さんは義両親に
「(奥さん)が居なくなったかもしれない」
と伝え、だいぶ良くなっていた体調が再び悪化してしまった。
奥さんはどこに消えたのか
1日、2日と経過し、とうとう一週間が経った。
その頃になると、お義兄さんも出て行ったのだと完全に理解した。
しかも、電話は着信拒否されているらしくつながらない。
その後、またしても離婚届が義実家に送られてきた。
以前と異なるのは、奥さん側の署名がまだされていなかったこと。
しかも、返送先も記されておらず、署名したとしても、その後どうすれば良いのか分からなかった。
「一体何を考えてるんだか・・・」
義両親は呆れ果てて何も言えない様子だった。
だけど、お義兄さんの前ではあまりその話は出さないようにしていた。
一連のゴタゴタにより再び体調を崩してしまったので気遣っていたのだろう。
夫でさえ、普段よりも優しく接していた。
結局、連絡がついたのはそれから数か月後のことだった。
奥さんの方から連絡してきて、急に
「明日、そちらにうかがいます」
と言ってきた。
お義兄さんと義両親はやっと話ができることに安堵した。
音信不通だったのが急に義実家に来るということで、その日は朝から皆ソワソワ。
お義母さんなんて緊張してしまって心ここにあらずといった様子で、たくさんの失敗をしたらしい。
洗濯機が止まって干すだけになっていた物をもう一度回してしまったり。
ドアに激突して肩を傷めたり。
ケーキを用意しようとして、お財布も持たずに出かけてしまったりしたそうだ。
後から笑い話として教えてくれた。
それだけ緊張していたということだが、その日彼女は来なかった。
予定時刻を過ぎても来ないので、お義兄さんが携帯に連絡を入れた。
コール音は鳴れど、応答はなく。
とうとう、その日姿を見せなかった。