「中身が汚れちゃった」
夫がようやく帰り、やっと拷問のような時間から解放された。
たった2時間。
楽しいことなら、
あっという間に過ぎる時間。
でも、
苦しくて辛いだけの2時間は、
果てしなく長い。
一言答えるだけで、
頭をフル回転させる必要があった。
怒らせないように。
ただ、それだけを考えて。
大人の私でさえ、
これほど消耗しているのだ。
子どもが平気なはずがない。
ましてや、
ずっと虐待されてきた父親との時間だ。
心配して様子を見ていると、
子どもが突然、
「ママ、お風呂いれてもいい?」
と聞いてきた。
さっきまで眠そうだったのに、
目がはっきりしている。
どこか、
切迫したような表情。
そう言われて、
私も気づいた。
今日は、まだお風呂に入っていない。
すっかり抜け落ちていた。
「こんな時間だけど大丈夫?
眠いでしょう?」
そう聞くと、
「絶対に入りたい」
と強い口調で言った。
結局、
夜の12時にお風呂に入ることになった。
お風呂上がり。
ドライヤーで髪を乾かしていると、
「綺麗になって良かった」
と、ぽつり。
意味が分からず聞き返すと、
パパと過ごすと、
自分の中身が汚れてしまった気がする。
そう教えてくれた。
体ではなく、
中身が。
それほどまでに、
強い嫌悪感を抱いているのだ。
歯磨きも念入りに
その後の歯磨きも、
いつもよりずっと長かった。
いつもなら、
「もう少し丁寧に磨いたら?」
と声をかけたくなることもあるのに。
あの日は違った。
鏡を見つめながら、
黙々と磨いている。
パパと接した後は、
中身が汚れてしまったと感じる子ども。
体を洗い、
歯を磨き、
それでも、
どこか落ち着かない様子だった。
寝る前、
「もう、ピカピカだよ」
と声をかけると、
ほんの少しだけ、
力が抜けた表情になった。
その顔を見て、
胸が締めつけられる。
この話を夫にしたら、
どんな顔をするだろう。
きっとまた、
私の育て方が悪いと
言うのだろうか。
