一定の周期で起こる夫の爆発
一緒に暮らしていた頃から、感じていた。夫の爆発には、周期があると。
もちろん、いつも怒っていたわけではない。
機嫌のいい日もあれば、穏やかな日もあった。
でも、それは長くは続かない。
ある日、突然爆発する。
周りの空気が凍りつく。
何がきっかけなのか。
何に腹を立てているのか。
正直、理由なんてなかったのだと思う。
不機嫌な周期に入ると、些細なことで怒り出す。
そして、私たちに当たり散らす。
いつスイッチが入るのか分からない。
それが、何より怖かった。
神経はすり減る。
ずっと気を張っている。
気づけば、胃まで痛くなっていた。
大爆発の時期になると、もう誰にも止められない。
ただ、嵐が過ぎるのを待つしかなかった。
怒鳴る。
物に当たる。
子どもにまで向かう。
気づけば私たちも、
「ああ、もうすぐだ」
と分かるようになっていた。
分かっても、どうすることもできない。
そんな毎日を、夫の機嫌をうかがいながら過ごしていた。
そして――
大きく爆発したあとは、決まって静かになる。
これも、いつもの流れだ。
まるで別人のように、おとなしくなる。
さっきまで暴言を吐いていた人と、穏やかに話す人。
それが同じだなんて、すぐには信じられなかった。
モードが切り替わると、「酷いことをした」と言う。
反省したような素振りを見せる。
ごく稀に、「悪かった」と謝ることもあった。
謝られると、許さなければいけない気がする。
腑に落ちないまま、「水に流そう」と思ってしまう。
無理に気持ちを押し込めていた。
それが間違いだと、気づけなかった。
「パパが嫌い」
夫がいない時、子どもが小さな声で言った。
「パパなんて嫌い」
心の中では、私も同じ気持ちだった。
でも、「ママもだよ」とは言えない。
「そうなんだね」と曖昧に返した。
その時、夫は近くにいないと思っていた。
少なくとも、直前まではいなかった。
でも――気づいたときには、背後にいた。
音もなく、近づいてきたのだろうか。
驚いて、小さく声が出た。
体も思わず跳ねた。
動揺をごまかそうとして、関係のない話を続ける。
余計に不自然になる。
そんな私を見ても、夫は無表情のままだった。
しばらく、何も言わない。
それが、余計に怖い。
思わず「どうしたの?」と聞いた。
すると突然、鼻をすすり始めた。
そして、子どもに向かって言った。
「お前がそんなことを言うなんて。
相手の気持ちを考えたことがあるのか」
ひどく傷ついたような顔だった。
涙まで見せる。
子どもが目をそらす。
すると、さらに言葉を重ねた。
「もうパパは、お前のことなんて知らない」
もしもう少し大きければ、受け流せたかもしれない。
でも、まだ小学生だった。
この言葉は重すぎた。
自分がひどいことをしたと、強く思い込んでしまった。
本当は――
毎日のように傷つけられて、嫌いになっただけなのに。
こうやって、夫は被害者の立場に回る。
そして、相手を責める。
傷ついたふりをする。
そして、相手を傷つける。
分かっていても、苦しかった。
別居した今も、それは変わらない。
夫はいつでも被害者だ。
私たちは加害者になる。
身勝手な妻が、何の非もない夫を捨てた――
そんな物語を、今も演じ続けている。
