署名済みの離婚届
早く離婚したい。家を出てからずっと、
そればかり考えていた。
その思いが強くなったのは、
家に戻って一年が過ぎた頃。
ふと、将来が怖くなった。
せっかく離れたのに、
夫の干渉は止まらない。
子どもへの執着も、
薄れるどころか、
日ごとに強くなっていった。
待っているだけでは、ダメだ。
決心した私は、
なじられることを覚悟の上で、
離婚届を義実家へ送った。
あの人が、
素直に署名するとは思えない。
それでも、
別々の未来へ進む意思だけは、
はっきりと示したかった。
義実家に送れば、
義両親の目に触れる。
そんな打算があったのも、事実だ。
夫だけなら、
無視されて終わるかもしれない。
でも、義両親が見れば、
きっと動く。
ズルいと思いながら、
巻き込もうとしていた。
それくらいしないと、
あの人は動かない。
以前のこともあって、
離婚届は複数用意していた。
破られても、捨てられてもいいように。
予備を持つことは、
もう前提になっていた。
こうして、
ようやく踏み出した一歩。
賽は、投げられた。
慌てふためく義両親
しばらくして、
義両親から連絡があった。
平日の昼間に。
その時間は仕事だと、
何度も伝えているのに。
都合のいいタイミングでかけてくる癖は、
変わらないらしい。
しかも話は遠回しで、
なかなか要領を得ない。
時間ばかりが過ぎて、
途中で切り上げた。
言いたいことは分かっている。
「離婚なんて言わないで」
「見捨てないであげて」
親だから、
夫をかばいたい気持ちは分かる。
でも、私も親だ。
子どもを守るために、
動かなければならない。
そしてその子は、
義両親の孫でもある。
守ろうとは、思わないのだろうか。
そんな思いを飲み込んで、
「早くけじめをつけたい」と伝えた。
すると、
「急に言われても」と返ってくる。
急ではないこと。
これまで伝えてきたこと。
そして、
期限を設けたいことだけを伝えて、
電話を切った。
それにしても、
あの人は何をしているのだろう。
動きが見えない時が、
いちばん不気味だ。
