2025年2月22日土曜日

夫が不在の間に家を出る準備

絶好のチャンスが訪れた

珍しく夫の機嫌の良い時があった。

基本不機嫌なので、こんなことはあまりない。

普段より気を使わなくて済むので私たちも非常に楽だった。

機嫌が良いのには、もちろん訳があった。

近々友人達とのお出かけが控えていた。

それで、いつもよりも監視の目が緩んでいた。

前々から行きたいと言っていた夫の大好きなアーティストのライブ。

仲間内5人で行くと報告を受けていて、その日を今か今かと心待ちにしていた。

数日前から普段なら怒るようなことにも反応しなくなった夫。

子どもが何か失敗しても、軽く『バカだなぁ』というくらい。

一瞬感動しちゃったけど、これが普通の生活なんだよね。

でも、私たちにはとてもありがたかった。

このライブに行くのは学生時代の友人2人とその奥さんや彼女たち。

夫婦、恋人カップル+夫という組み合わせだ。

実は『一緒に行かない?』と声をかけていただいたのだが、丁重にお断りした。

その集まりに参加すればどれほどのストレスがかかるかを想像できてしまったからだ。

基本、悪い人たちではないのだと思う。

常識的な言動をする人たちなのに、よく夫と付き合っているなと感心したものだ。

これだけ長い付き合いなら本性の部分も見てきたはず。

それなのに付き合っていけるということは、あの独特な個性の持ち主である夫を許容してくれていたということだ。

だけど、その集まりの中に入ると物凄く疎外感を感じることに気づいた。

早く打ち解けようと努力したこともあったけど、無駄だと悟った。

あの人たちには妙な連帯感があり、他を寄せ付けない空気がある。

それと、基本は元々の5人で集まりたいという雰囲気がとても強くて、通常は参加するかを聞かれることも無かった。

まあ、私にとっては都合が良かったんだけど。


いつもは『旦那さんちょっと借りるね』という感じなんだけど。

急にこのようなお誘いを受けることもあった。

私が行っても良い集まりというのがあるようで、ライブがそうだったらしい。

せっかくのお誘いを断った時には『えっ、誘ってあげたのに?』という空気になった。

それはそれで怖かった。

断る権利もないんかーい!と心の中でツッコミを入れつつ、必死に笑顔を作りながら

「せっかくお誘いいただいたのに、すいません」

と謝った。


夫が不在の間にやることがある。

やっと夫の居ない時間が訪れた。

いつも家に居るので、監視の目が怖くてなかなか自由に動くことができなかったのだが、やっとその機会がやってきたのだ。

私がやろうとしていたのは家出の準備。

こんなこと、夫の前では口が裂けても言えない。

普段は棚の中を見るだけでも、

「何してるの?探し物?」

とこわーい声で聞かれるから自由なんてものはない。

その日は絶好のチャンスを逃すわけにはいかないと朝から色々と動いた。

ところで、このライブというのが平日の夜だったのだが、夫は朝早くから出かけて行った。

家に友だちが来るまで迎えに来て、物凄く高いテンションで出かけて行った。

『そのままずっと出かけていて欲しいものだね』なんて思いながら見送ったわけだが。

夫視点だと何らかのフィルターがかかって見えたのか、

「俺だけ何か悪いね、一人で大丈夫?」

としおらしいことを言って珍しく気づかう素振りを見せた。

寂しそうに見えたのかもしれない。

でも実際には頭の中はその日にやることでいっぱいだった。

公演時間は分かっているから、最低限何時までなら自由に動けるかも把握している。

子どもは保育園に預けたし、日中は自由時間だ。

準備は万端。

車で出かけていく夫を見送った後、私はすぐに行動を開始した。

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