夫好みの恵方巻を用意するのも大変だった
節分の日に子どもとご飯を食べていて思い出した。元夫と過ごしていた頃のことを。
毎年恵方巻を用意していたのだが、それがとても大変だった。
子どもや私は目の前の選択肢の中から選ぶので問題ない。
だけど、夫は選り好みが激しくてなかなか納得のいく物を見つけられなかった。
大抵は仕事帰りに購入するから、スーパーから電話をかける。
それで、目の前にあるラインナップを電話で説明したり写真を送ったりして判断を仰いだ。
子どもはすぐに決まるけど、夫は『うーん』と唸ったまま答えが出ず・・・。
無理強いしても機嫌が悪くなるだけだから、
「ちょっと遅くなっちゃうけど、違うスーパーに行ってみるよ」
と伝えた。
別のスーパーに足を運んだら、時間的なこともあって品薄になっていた。
残っている商品をまた写真に撮り、夫に送信。
連絡を待ってるはずだから見たら何かしらのアクションがあると思ったのに待てど暮らせど返事がこない。
もしかして気づいてないのかな?と思って連絡してみたら、
「さっきのスーパーの方が良かったわ」
と言われて力が抜けた。
夫はいつもそうだった。
何か用意しなければならない時に選ぶのが非常に難しくて、そのたびに苦労した。
さっきのスーパーが良いなんて気軽に言うけど、歩くと20分もかかる。
そこまで戻ってから購入して家に帰ったら、かなり遅い時間になる。
本当は気が乗らなったけど、それ以外はもう受け付けない感じだったので、
「じゃあ少し遅くなるけど・・・」
と言ってみたら、
「そんなにかからないだろ」
と言い放った。
夫は、自分が満足するものを用意するために私が時間や手間をかけることを当然だと思っていた。
そうすることが『愛情』だと直接言ってくることもあった。
だけど、夫からは私に何もしてくれない。
いや、何もしてくれないどころか毎日モラハラをして子どもを虐待して。
これも愛情だと言うのか。
その日、私は慌てて元のスーパーに戻ってやっと目的のものを手に入れたのだが。
いつもより遅く帰った私に、
「なんかもう腹減ってないわ」
と冷たい視線を向けた。
遅くなったことへの当てつけだった。
私だっていつもより1時間も遅くなってしまったからと思い、帰り道は焦っていた。
途中走ったし、それ以外も早歩きをした。
それでも納得してもらえなかった。
期待通りに動けない私は能無しなのだそうだ。
昼間義両親が持って来てくれた差し入れ
恵方巻と一緒に食べるお吸い物を、義両親が昼間に持って来てくれた。
確かに汁物がいるな、と思ったんだけど。
夫がイライラしていたから用意する余裕が無かった。
だから『ありがたいな~』と思っていたのだが、夫はそんな呑気な私に嫌悪感を表した。
「それよりも何か言うことがあるんじゃないの?!」
と言われ、何のことか分からず。
表情から夫が怒っていることは明らかだった。
だけど、なぜ怒られてるのか全く分からない。
遅くなったこと?
それともお吸い物の話の後だから義両親関連?
瞬時に色んな可能性を考えた。
私がすぐに答えずに黙っていたものだから、夫は更にイライラして、
「お前が抜けてるから、こうやってわざわざ持って来てくれてるんだろーがよ!」
といきなり怒鳴られた。
こういうイベントの時には怒られることが多いから朝から気が張っていた。
今日の帰りはいつも以上に夫に気を使い、いっぱいいっぱいだった。
それなのに、やっと恵方巻を用意できたと思ったのに、やっぱり怒られてしまった。
悲しいやら悔しいやらで涙がぶわーっと出てきて、
「怒鳴らないでよ」
と言うのがやっとの状態。
だけど、私が泣いたところで反省するような人ではない。
まだイライラが収まらないのか舌打ちしながら乱暴に私の背中を押してキッチンの方へと追いやり、
「とにかく早くしろよ!」
と急かした。
この時の夫のイライラはマックスに近かったので、ただひたすら怖くて怯えながら用意したのを覚えている。
その間、すぐ傍で監視していて私が何かするたびに深いため息をついた。
子どもは部屋の隅っこで聞こえないふりをしていた。