私なりのケジメ
うちの会社では、配偶者が扶養内の場合に
扶養手当が支給される。
額にすると5千円。
決して小さい額ではない。
そのお金があれば、
毎月のやりくりも少しは楽になる。
だけど、
家を出た時点で
私は会社に伝えた。
「一緒に暮らしていないので、
支給から外してください」
これは、
私なりのケジメだった。
こんなことからでも、
「夫と離れた」という実感が欲しかった。
そんな気持ちもあった。
だけど、
会社の担当者や上司は言った。
「扶養には入っている状態だから」
確かに、
夫の生活費は私が負担していた。
他に必要な物があれば、
その費用を求められることもあった。
夫が自分で出していたのは、
趣味のアーティスト関連の出費や、
人との付き合いくらいだったと思う。
家賃も光熱費も払い続け、
生活は厳しかった。
それでも、
形式上は扶養の状態が続いていた。
その後、
夫はほどなくして働き始めた。
離れて一人になった途端、
働けるなんて。
本当はもう元気だったんじゃないの?
そう思っていた頃、
夫から言われたのが――
「お前のせいで治らなかった」
その言葉を聞いた瞬間、
どっと疲れが押し寄せた。
この人はいつもそうだった。
悪いことがあれば私のせい。
良いことがあれば自分のおかげ。
そんな考え方に、
私は何度も振り回されてきた。
後悔していると思いたい
夫から電話が来た時、
嫌々ながらも応じた。
話の流れで、
扶養の話になった。
私は
「扶養から外す手続きをしている」
と伝えた。
すると夫は、
毎月の扶養手当の額を確認した。
「5千円だったよな?」
そうだと答えると、
夫は言った。
「だから、別居なんてしなければ良かったんだよ」
冗談じゃない。
5千円のために、
全てを我慢して生きる生活なんて
私たちは望んでいない。
夫には、
私たちが何を失ってきたのか
伝わっていなかった。
たとえこれから先ずっと
5千円少なくなったとしても、
あの抑圧された生活から
解放されるのなら、
安いものだと思っていた。
私は、
「会社の規定だから仕方ないよね」
とだけ答えた。
そして、
何か言いたそうにしていた夫の言葉を遮り、
別の話題へ変えた。
本当は夫は、
「後悔してるんだろ?」
と言いたかったのだと思う。
私の選択は間違いだった。
そう証明したかったのだろう。
逆に私は、
夫に後悔して欲しかった。
自分がしてきたことを振り返り、
傷付けた相手がいたことを
理解して欲しかった。
そのことは何度も伝えた。
だけど、
少なくとも夫は
自分の行動を顧みることがなかった。
一度も本気で後悔しているようには
見えなかった。
むしろ夫は、
「間違ったことをした私が、
いつか後悔する」
と本気で信じているようだった。
