あきらめない夫
子どものテストを破り捨てた夫は、反省などしなかった。
「言っても分からないんだから、
やられて当然」
言葉の端々から、
そんな考えが透けて見えた。
何も謝って欲しいわけではない。
どうせ、
自分に非があると認めないんだから。
それよりも、
今後一切かかわりたくなかった。
どこか遠くで、
近況も知らずに生きたかった。
でも、
状況がそれを許さない。
義両親はこまめに連絡してくるし、
夫の友人たちも
要らぬ世話を焼いてくる。
そんな状況に後押しされたのか、
夫は反省もせず、
私を責め立てるような連絡を
連日のように寄越した。
「このままでは駄目だ。
だから、塾に行かせろと言ったんだ」
「もう、お前には任せておけない」
実は、夫には
塾に通っていることを
ひた隠しにしていた。
塾に通う条件として、
「中学受験をすること」
を義務付けられていたからだ。
通わない場合には、
義実家で皆で暮らし、
夫の通った中学へ進学する。
そんな選択肢を突き付けられ、
私は何とかかわしてきた。
消えない支配欲
正直なところ、
『この人はどこかおかしいんじゃないか』
と思った。
離れていても、
全てをコントロールしたがる。
こちらの意思などお構いなしに、
自分の考えを押し付けてくる。
それって、
どう考えても異常だった。
今回も何とかかわそう。
少し経って、
ほとぼりが冷めれば、
また元に戻るだろう。
そう信じて、
祈るような気持ちで
日々をやり過ごしていた。
けれど、
事態は最悪の方向へ向かっていった。
以前、散々揉めて、
やっとの思いで納得させた塾の話。
それを蒸し返してきたのだ。
「もう、お前の話は聞かない。
全部、(子ども)のためだ」
まるで決定事項を告げるような口ぶりだった。
子どもはやけに冷静で、
「そのうち、諦めるでしょう」
と言っていたけれど……。
私は、
言いようのない不穏な空気を感じていた。
寝ても覚めても、
そのことばかり考えた。
いっそのこと、
どこか遠くに逃げてしまおうか。
そんな現実逃避にふける毎日だった。
