破壊された二冊目
夫は子どものノートを真っ二つにした。
そこに、
正当な理由なんてない。
でも、
私はあまりにも弱くて、
止めることができなかった。
呆然としていると、
夫がまた不穏な動きを見せた。
横に置かれていたノートを持ち上げる。
真ん中をつかみ、
今にも引き裂こうとしていた。
止めなくちゃ。
今度は勇気を振り絞って、
その手をつかんだ。
「止めてよ!」
叫ぶように言うと、
夫はせせら笑った。
「お前って、
口ばっかだな」
「ちゃんとノートを取ってないこと、
気づいてなかったんだろ?」
「そんなお前に、
何も言う資格は無い」
一見すると正論のような
屁理屈を並べながら、
再びノートを破ろうとする。
それを必死で止める私。
しばらく押し問答が続いた時、
ふいに電話が鳴った。
彼女に救われた
電話の相手は、
以前匂わせのあった例の彼女だった。
まだ続いていたんだ・・・。
驚いた。
でも同時に、
安堵している自分もいた。
全身の力が抜け、
その場にへたり込む。
子どもも、
同じように座り込んでいた。
見ると、
夫はすっかり元の表情に戻っていた。
据わった目は消え、
声もいくぶん柔らかくなっている。
こんなにも一瞬で
変われるものなのか。
あれは演技だったのではないか。
そう思うほど、
別人のようだった。
彼女から呼び出されたらしく、
夫はそそくさと帰り支度を始める。
帰って欲しくて、
何度も促したのに帰らなかった。
それなのに。
彼女の一声で、
夫は動いた。
とにかく、
この時は本当に助かった。
でも・・・。
目の前には、
真っ二つにされたノートがある。
「明日、どうしよう」
途方に暮れた。
1冊は真っ二つ。
もう1冊にも、
大きな切れ目が入っている。
2冊目は使えるかもしれない。
それでも、
手に取るたびに
嫌な記憶が蘇るだろう。
中を開くと、
一生懸命に書いた文字が並んでいた。
そのページだけは、
破られていなかった。
だから余計に悲しかった。
