父親の顔色をうかがう子ども
中学生になった子どもは、少しだけ逞しくなった。
好きなことを見つけて
楽しむ時間が増えたり、
お友だちとの交流も
小学生時代より活発になった。
ただ……。
「これでもう大丈夫」
とはならない。
虐待サバイバーの多くは、
その後の影響にも悩まされる。
日常生活に支障をきたす人もいる。
うちの子の場合、
離れても恐怖が消えなかった。
目の前に居ないのに、
パパの反応を気にする。
「これやったら、
パパに怒られるかな」
そんな言葉を発するたびに、
「もう、居ないよ」
と声をかけた。
影響は、
中学生になっても消えなかった。
パパに許してもらえるかどうか。
それが全て。
何をするにも、それが判断基準になっていて、
怒られそうなことは避けた。
私が強くならないから、
こんな風に子どもが怯えるんだ。
そう思って立ち向かった日。
あの日のことは、
今でも忘れることができない。
激しいやり取りを
目の当たりにした子どもは、
気づくとブルブルと震えていた。
夫に負けないように。
精一杯大きな声で応戦した私を
怯えるような目で見て、
「ママ、大きな声出さないで」
と言った。
電話口の声を聴くだけで
姿を見なくても、
声だけでも
恐怖を感じさせるのには十分だ。
時折、気まぐれに
夫が電話をかけてくる。
「子どもに代われ」と言われても
いつも断っているが、
どうしても諦めてくれない時には
2~3分だけ話す。
その短時間で、
驚くほど怯えていた。
電話を持つ手は震え、
かすれるような声で
パパの問いに答える。
夫はそれに気づかない。
大丈夫だよ。
そう言いたくて
子どもの背中に触れた時、
手の平を伝って
その恐怖が伝わってきた。
ドクン。
ドクン。
あまりにも大きな音を立てていて、
その鼓動が恐怖を物語っていた。
実は私も、
電話口に出る時には
いつも同じようになる。
だけど、
電話を切れば平穏な時間を
取り戻せるから。
それまでの辛抱だと思い、
じっと我慢する。
子どもにそんな我慢をさせるのは
本当に酷な話だ。
中学1年生の夏休みの直前、
子どもは耐えきれなくなり、
「パパのところに
行くしかないか」
と言った。
部活と塾と、
夏休みは忙しくしている。
そう伝えたのに、
夫は諦めず電話をかけてきた。
少しずつ、
子どもは追いつめられていった。
