強い心で立ち向かいたい
私も、少しずつ強くなっていた。以前は、怒鳴られるだけで震え上がり、
何も言えなくなっていた。
その場を収めるために、
夫の機嫌が良くなるような言葉を並べ、
悪くなくても、私が謝る。
それしか方法がないと、思い込んでいた。
でも――
このままでは、子どもを守れない。
家に戻ってからの出来事が、
それをはっきりと教えてくれた。
まず決めたのは、
子どもに電話を取り次がないこと。
ただ、私まで電話に出なくなれば、
夫の怒りは、もっと激しくなる。
だから私は、電話には出た。
当たり障りのない話をしながら、
時間をやり過ごす。
当然、
「子どもを出せ」
と言われる。
それをどうかわすか。
それが一番の課題だった。
私の方から話がある、という形にすれば、
ある程度は収まる。
本当は話すことなどなくても、
次は何を話そうかと、無理やり考えた。
ただ――
「夫と話したがっている」
そんなふうに勘違いさせるわけにもいかない。
“あいつは、俺から離れられない”
そう思わせるのも、避けたかった。
匙加減の難しい、
綱渡りのようなやり取りが続いた。
子どもにも変化が・・・
私が少し変わり始めた頃、
子どもにも、小さな変化が見え始めた。
テレビを見ても無表情だったのに、
ほんの少しだけ、
口元がゆるむようになった。
以前のように、
声を出して笑うわけではない。
静かに、
かすかに微笑むだけ。
それでも――
その笑顔を見られたことが、
ただただ、嬉しかった。
一度心に決めると、
迷いはなくなるものらしい。
「絶対に取り次がない」
そう決めてから、
私は一度もブレなかった。
それを一か月、続けた。
すると、
夫も、次第に子どもを出せとは言わなくなり、
それが当たり前になっていった。
その代わり、
朝も、夜も、
私には連絡が来る。
そのたびに、対応する。
ここで無視して、
また子どもに矛先が向くのが怖かった。
気がつけば――
私の日常は、
夫からの連絡に縛られるものになっていた。
