夫が来るかもしれない、という恐怖
家に戻ってから最初の週末だった。朝、少し早く起きて、
子どもと二人で近所に散歩に出かけた。
家にいると、
どうしても色んなことを考えてしまう。
それが明るい想像ならいいのだけれど、
浮かぶのは、恐怖から生まれる悪い想像ばかりだった。
少し、疲れてしまった。
だから、外に出ようと思った。
「朝のお散歩に行こうよ」
そう誘うと、子どもは二つ返事でついてきた。
きっと、同じ気持ちだったのだと思う。
歩いて、歩いて。
ただ、ひたすら歩いた。
いつもは行かないような場所まで足を伸ばすと、
少しずつ心が軽くなっていった。
家から離れれば離れるほど、
心が軽くなるなんて。
考えてみれば、おかしな話だ。
でも、あの空間にいれば、
どうしても前のことを思い出してしまう。
しかも、夫やその友人の私物まで、
ご丁寧に残されたままだ。
意識しないように、なんて
無理な話だろう。
夫の気配を感じるたびに、
「もしかしたら、戻ってくるかもしれない」
そんな恐怖が、胸を締めつける。
恐怖と闘いながらの生活。
心は、すっかり不安定になっていた。
どうでもいいことで涙があふれたり、
急に何もできなくなったりした。
日曜日の訪問者
土曜日、少し夜更かしをした。
子どもと話していたら、
つい遅くなってしまったのだ。
だから日曜日は、
少しお寝坊して、昼近くまで布団の中にいた。
「そろそろ起きなくちゃ」
まだ半分、夢の中。
体を動かそうとした、その瞬間――
インターホンが鳴った。
ビクッとして、息を止めた。
外の様子をうかがう私。
その横で、子どもはまだぐっすり眠っていた。
何かの勧誘かもしれない。
まだパジャマだし、
居留守を使おうか。
そう考えていたら、
再び、インターホンが鳴った。
警戒しながら、
足音を立てないようにドアに近づいた。
そっと、ドアスコープをのぞき込む。
そこに映っていたのは――
義両親だった。
