友だちからのお誘いでその気に・・・
子どもが急に、「塾に行きたい」と言い出した。
普通のご家庭なら、
「やっとやる気になったのね!」
と、大喜びするところだろう。
でも、我が家はちょっと事情が違う。
聞いた瞬間、
『現実的に可能だろうか?』
そんな考えが、真っ先に浮かんだ。
まず気になるのは、やっぱりお金。
三人で暮らしていた頃もカツカツだったけれど、
家を出てからは別々の拠点で生活している。
生活費は二重。
当然、余裕なんてない。
元の家の方を全額負担していたわけではない。
それでも、自由に使えるお金はごくわずかだった。
少し浮いたら、
できるだけ将来のために貯金したい。
それは、
私たちが安心して暮らすためのお金。
だから大事で、
簡単に崩すわけにはいかなかった。
とはいえ、
子どもが「やってみたい」と言っている。
それを頭ごなしに否定するのも、違う気がした。
できれば、
色んなことに挑戦させてあげたい。
あんな目に遭って、
それでも勉強に向き合おうとしている。
それだけで、もう十分すごいことだ。
ただ――
不安は消えない。
学校帰りに、
家の近くの塾へ通うこと。
その地域には、夫がいる。
しかも、徒歩圏内。
もしこの情報を知ったら、
待ち伏せしないとは言い切れない。
子どもは、そんなこと想像もしていないだろう。
でも私は、
どうしても過去のことが頭をよぎってしまう。
「うーん……」
思わず唸って、考え込んだ。
背中を押したい気持ちと、
不安な気持ち。
その間で、
すぐに答えは出せなかった。
現実的な対策を考えた
せっかく出てきたやる気。
できれば、摘みたくない。
そう思って、
現実的にできることを一つずつ考えた。
まずは、お迎え。
塾が終わる時間に迎えに行くことはできる。
ただ、急な仕事が入ったら間に合わないかもしれない。
一人で外で待たせるのは危険だ。
そう思って、実際に現場を見に行った。
子どもと一緒に。
本人は入塾だと思って、
すっかりはしゃいでいた。
その姿を見たら、
もう「行かせたい」が勝ってしまった。
実際に見て分かったのは、
建物の中に待てるスペースがあるということ。
これなら、
外で待ちぼうけになる心配はない。
事前に講師の方に伝えておけば、
より安全に通わせられそうだ。
お迎え問題は、クリア。
残るは、お金。
正直、余剰金なんてない。
食費や雑費を少しずつ削って、
それでも足りない分は、
貯金に回していた一部を塾代へ。
そうして、なんとかやりくりした。
ここまで準備して、
ようやく「通える」。
母子家庭なんて、
どこもこんなものだと思う。
余裕は、ない。
「パートナーに出してもらえば?」
そう言う人もいるだろう。
でも、
それが現実的に不可能な家もある。
仮に夫が、
ブランクなく働き続けていたとしても――
きっと、お金は出さない。
むしろ、お願いした瞬間、
「お前には任せておけない」
そう言って、
子どもを取り上げようとするだろう。
実際、何度か話したことはある。
そのたびに、
激怒されるか、無視されるか。
こんな話を切り出すのは、
本当に心臓に悪い。
繰り返すうちに、
言う前から結末が見えるようになった。
だから私は、
最初から諦める方が楽なのだと、
いつの間にか学んでしまった。
