目的が分からない、という恐怖
夫の友人Nから、頻繁に連絡が来るようになった。そんな軽い感じでやり取りするような間柄ではないと思うのだが、ある時を境に、急にメッセージを送ってくるようになった。
内容も、どうでも良いものばかり。
はっきり言って、面倒だった。
でも、夫に何を言われるか分からない。
変なことを吹き込まれて、状況が危うくなるのは困る。
これから「離婚」という一大イベントを控えているのだ。
失敗したくないと思うのが、普通だろう。
そんな思いが根底にあって、
いつもより少し愛想良く、丁寧に対応してしまった。
それが良くなかったのか、
連絡はどんどんエスカレートしていった。
酷い時には、日に何度も。
さすがに仕事中はないが、
朝の始業前や昼休み、
夜、寝る前の時間帯にも届く。
通知を見るたびに、気が滅入った。
気づけば、未読スルーするようになっていた。
これはまずい。
もしかしたら、夫が怒鳴り込んでくるかもしれない。
そんな恐怖もあり、
気力を振り絞って、数回に一回は返事をした。
それにしても、一体何を考えているのか。
こちらの動向を探っている?
それとも、ただの善意?
分からないというのは、非常に怖い。
あれこれ考えてみても、
はっきりとした答えは出ず、
結局「夫の差し金だろう」という結論に落ち着いた。
疑心暗鬼になり、言葉の裏を読むように・・・
Nから連絡が来るたびに、
その意味を考えるようになった。
そのまま受け取るのは危険だと思い、
言葉の裏まで読む。
しまいには、裏の裏まで読もうとして、
何が何だか分からなくなることもあった。
考えないようにしても、
すぐ次のメッセージが来る。
精神的なストレスで、
心の余裕はどんどん削られていった。
そんな中でも、
子どもの存在だけは癒しだった。
ちょっとした会話一つで、
ギスギスした心が、少しだけ和らぐ。
それでも、Nからの連絡は増えていく。
ついには、毎日。
怖い。
正直、怖すぎた。
返事をしても、しなくても、
毎日のように来る。
それに気づくだけで、ストレスだった。
Nと夫、
二人からじわじわ追い詰められているような気がして、
思わず、夫に真意を確かめたくなった。
……いや、待て。
こちらから連絡をしたら、
相手の思うつぼかもしれない。
ここは、静観した方がいい。
そんな葛藤を繰り返し、
結局、夫への連絡はしなかった。
その頃、Nは何度も聞いてきた。
「困っていることはない?」
困っていることと言えば、
夫のこと、そのものだった。
友人として、何とかしてほしい。
Nに対する要望は、それだけだった。
それを言いたい衝動に駆られた。
でも、やっぱり危険だと思い、
当たり障りのない返答をした。
正解だったのかは、分からない。
ただ一つ言えるのは、
Nからの連絡が来るたびに、
私の中の警戒心だけが、
確実に育っていったということだ。
