2026年8月20日木曜日

「制服代はもういい」と言われたけれど

制服代の代わりに求められたもの

制服代を何度か手渡した後、

彼女にこんなことを言われた。


「制服代は、

もう良いって」


驚いて見上げると、

いつもよりも

柔和な表情をしていた。


「お義母さんも、

お金が欲しいわけじゃないからって」


そう続けた。


私は内心、


『そりゃーそうだ。

元々、払う必要のないものだもの』


と思った。


でも、

口には出さなかった。


あの制服は、

購入したものではない。


ご近所の方からいただいた

お下がりだった。


だから、

購入代金を返済すること自体が

間違っている。


でも、

その事実を聞かされたことは、

秘密だった。

お義母さんと私二人だけの秘密。


もし言ってしまえば、

今度はお義母さんが

夫から責められる。


それを想像したら、

とても言うことはできなかった。


ずっと知らないふりをして、

家計には痛手だったけれど、

返済を続けてきた。


それなのに、

急に、

『もういい』

と言われた。


どういう心境の変化?


それとも――


お義母さんが、

真実を話す気になった?


私がいぶかしんでいると、

彼女は封筒を受け取りながら、


「これで最後ということで」


そう言った。


ほっとしたのも束の間

もう、

払わなくていい。


その分のお金を、

他のことに使えるようになる。


じわじわと

喜びが広がっていった。


思わず、

これまでの理不尽な仕打ちも忘れて、


「ありがとうございます」


と、お礼を述べた。


これでようやく、

自分たちのことに

集中できる。


それが嬉しかった。


間もなく中学生になる子どもには、

まだ買い足さなければならない物もある。


それを考えたら、

家計には

少しの余裕もない。


一人、

これからのことをあれこれ考えながら、

私は喜んでいた。


ところが――


次の瞬間、

現実に引き戻された。


「(お義母さん)が、

お金はもう受け取れないって」


「その代わり、

(子ども)ちゃんとの時間を

少し増やしたいみたい」


その言葉を聞いた瞬間、

息が止まった。


やっぱり――


裏に何かあったんだ。


そんな落胆にも似た気持ちと、

『やばい!』という焦り。


全身から

汗が出るくらい慌ててしまい、

すぐには返事ができなかった。


すると、

彼女が念を押すように言った。


「まさか、

断らないよね」


その言葉が、

とても怖かった。


その時、

子どもは出かけていて、

彼女と二人きりだった。


「(子ども)ちゃんがいる時に、

また来ます」


そう言って

帰ろうとする彼女を、

私はとっさに引き止めた。


そして、

一つ提案した。


「(夫)のいないところで、

お義母さんと二人で

お茶をするくらいなら……」


すると、

彼女は軽蔑するような口調で

こう答えた。


「なんで勝手に決めるの?

(夫)やお義母さんと

話し合うべきでしょ」


強い言葉。


呆れたような表情。


何だか、

自分がとても

非常識なことを

言ってしまったように感じた。


頭の中が、

ひどく混乱した。

「制服代はもういい」と言われたけれど

制服代の代わりに求められたもの 制服代を何度か手渡した後、 彼女にこんなことを言われた。 「制服代は、 もう良いって」 驚いて見上げると、 いつもよりも 柔和な表情をしていた。 「お義母さんも、 お金が欲しいわけじゃないからって」 そう続けた。 私は内心、 『そりゃーそうだ。 元...