その言葉、本当に子どもの言葉?
その内容を確認し、状況を理解した。
そこには、
子ども自身からは
決して出てこないであろう言葉が
つらつらと並んでいた。
何が書かれていたのかというと、
『パパと離れていて寂しい』
『本当はみんなで暮らしたい』
『もっと会いに来て欲しい』
などなど。
明らかに、
”書かされている”
言葉だった。
驚いた表情で読み続ける私に、
「不公平だからな」
と言う夫。
えっ?と思い、顔を上げると、
当然といわんばかりの表情で、
こう続けた。
「一方的に(子どもと)引き離されて、
俺ばっかり辛い目にあってるから」
――ああ、そうだった。
この人はいつもそうだった。
自分の思いを優先し、
周りの気持ちなど考えない。
こんな手紙、
誰から見てもおかしいんだから
本来なら笑い飛ばしたいところだ。
でも、
その意図に気づいてしまった私は、
目の前の手紙を今すぐに
破り捨てたい衝動に駆られた。
まさか、親権のため?
書き終えた後、
子どもはそれを半分に折った。
夫が指示したからだ。
それをファイルに挟み、
大事そうにしまう。
「書いた方を内側にするんだよ」
そう言いながら、
ファイルをバッグにしまい込んだ。
そして、
「これが、記念すべき1枚目」
と言った。
この言葉が何を意図するのか。
私には分かっていた。
同じように、
何度も書かせるつもりなのだ。
問題なのは、
この手紙の使い方だった。
夫の気持ちを慰めるだけなら、
まだ良い。
でも、多分、
違う用途で使おうとしている。
恐らく、
離婚の話が進んだ時の
親権がらみのことで……。
それに気づいた私は、
夫のバッグから取り出して
破り捨てたくなった。
だけど、
そんなことはできない。
だから、
本当にそういう意図で
書かせたのかを
確かめようとした。
こういう時の夫は、
いつもよりも更に手ごわい。
私の質問をかわすように、
のらりくらりと
話が定まらない。
探り合いのような時間は、
15分ほど続いた。
結局、その日は、
夫の本当の目的を
確認することはできなかった。
