突然の夫の訪問
ある日、家に帰ると
見覚えのある靴が
玄関にあった。
夫だ・・・。
その瞬間、
身体が強張った。
身構えながら、
部屋の奥を見渡す。
狭い家だ。
どういう状況なのかは、
すぐに分かった。
小さなテーブルをはさみ、
夫と子どもが座っている。
テーブルの上には
白い紙が置いてあり、
子どもが何かを書いている最中だった。
私を見た瞬間、
満面の笑みで
「お帰り」
という夫。
その向かいには、
ひきつった表情で
自分の手元を見ている子ども。
ただ事ではない。
そう思った。
私は急いで靴を脱ぎ、
二人の元に駆け寄った。
そして、
何をしているのかを確認した。
パッと見ただけでは
分からなかった。
でも、
よくよく読んでみると、
どうやら手紙らしかった。
それも、
夫への手紙。
一体、
何のために?
私はますます
混乱した。
無理やり書かされた手紙
「何をしてるの?」
冷静に振る舞っていたつもりだが、
声は震えていたと思う。
夫は悪びれもせず、
「一緒に暮らせなくて寂しいから
手紙を書いてもらってるんだよ」
そう言った。
あれほどのことをされた子どもが、
パパに率先して
手紙を書くことなんて、
絶対にありえない。
伝えたいことも、
ないはずだ。
強いて言うなら、
『もう二度と会いたくない』
とか、
『近寄らないで』
とか。
浮かんでくるとしたら、
そんなネガティブな言葉ばかりだろう。
それなのに、
自分の寂しさを埋めるために、
無理やり手紙を書かせているの?
そう思うと、
腹の底から
嫌な感情が湧いてきた。
私はいぶかしみながら、
その紙に目を落とした。
そして、
じっくりと読み進めた。
すると、
ようやく分かった。
夫が子どもに
手紙を書かせていた理由。
それは、
私たちの平穏を
奪おうとするものだった。
