会社の人たちの優しさ
ようやく卒業式を終え、子どもは春休みに突入した。
小学生としての
最後の春休みだ。
何となく、
心がそわそわする。
あんなに小さかった子が、
もう中学生になるなんて。
そんな感慨が半分。
そして、
もう半分は、
まったく別のことを考えていた。
春休みは、
子どもが一人で
お留守番することになる。
多分、
夫や義両親は
そのタイミングを狙って
来るだろう。
それが心配で、
いつもは取らない有給を取った。
ありがたいことに、
会社の人たちにも
「大丈夫だよ。
お子さんと過ごしてあげて」
と言ってもらい、
一安心。
結局、
5日ほど有給をいただき、
子どもと過ごすことができた。
私を貶めるトゲトゲの言葉
有給は、
続けてではなく
バラバラに取った。
2回目の休みの日。
朝ごはんを食べて、
片づけをしていた時、
ふいにインターホンが鳴った。
多分、
夫だ。
直感で分かってしまい、
心臓がバクバクと
音を立てる。
出たくない。
でも、
出ないわけにもいかない。
恐怖と脱力と、
一言では言い表せない
ごちゃまぜの感情に支配されながら、
洗っていたお皿を置いた。
気を付けないと、
お皿を落としてしまいそうになる。
それくらい、
ドアの外の気配が
重苦しかった。
あまり時間が経つと、
また怒られてしまう。
ハッと我に返り、
慌てて玄関に行く。
そして、
ドアを開ける。
やはり、
夫だった。
確認した瞬間、
暑くもないのに、
背中にひんやりとした汗が流れた。
夫は、
子どもが出てくると
思っていたのだと思う。
だけど、
私が出た。
そして、
開口一番に発せられた言葉が、
これだった。
「あれ?
お前、仕事クビになったの?」
本当に、
バカにしてる。
そう怒れたら、
どんなに良かったか。
でも私は、
「そんなわけ、ないでしょ」
と曖昧に笑って、
やり過ごした。
夫は、
さらに言う。
「お前のことを使う会社って
何考えてるんだろうな」
私のような能無しを
雇うなんて。
そういう意味らしい。
そんなことを言われても、
怒ることすらできない。
否定もできず、
ただ、
こう言った。
「ありがたいと思ってるよ」
夫は、
面白くなさそうに
鼻で笑った。