命の灯を映し出すダルマの目
これは、母方のひいおじいちゃんにまつわる話です。
体調を崩していたひいおじいちゃんは入院することなく自宅で過ごしていました。
かなり昔のことなので、医師は往診には来ますが詳しいことはあまり分かりません。
病にふせるひいおじいちゃんの周りには子供や孫が集まってきて見守っていました。
しばらくあまり変化が無い状況が続いていた後。
家の周りには異様なほどのカラスが集まるようになりました。
静かな田舎の家は急に騒がしくなり、常にカラスが鳴いています。
のどかな田舎の一軒家に真っ黒いカラスが集まる様子は、さぞかし異様な光景だったことでしょう。
母はまだ子供だったのですが、その光景をはっきりと覚えているようです。
「カラスこわいね」」
子供たちは口々にそう言いますが、大人たちは違った反応でした。
カラスがこんなに騒ぐということは、いよいよ・・・。
そんな空気が子供にも伝わり、皆が不安な気持ちで過ごしていた頃。
また、別の異変が現れました。
それは家に置かれていた少し大きいダルマでした。
黒々とした墨で目を書き入れられていたダルマ。
数日前までは黒々としていたはずなのに、いつの間にか少し薄くなっています。
だけど、最初はほんの少しの変化でしたので、気にはなりましたが『気のせいかな』と思っていました。
気になって翌日もまた確認したところ・・・。
今度は薄くなっているのをはっきりと確認できました。
ビックリして母たち兄弟は大人に伝えようとしますが、
「そんなことあるはずないでしょう」
とか
「太陽にでも当たって薄くなったんでしょう」
などと言って取り合いません。
そうこうしているうちにダルマの目はどんどん薄くなっていき、微かに黒く書かれたのが分かる程度になっていました。
そしてその数日後にひいおじいちゃんは亡くなりました。
亡くなった後も不思議なことが・・・。
なんとその目の色が戻ったのです!
あの時、なぜ段々と薄くなっていったのか。
そして亡くなった後、なぜ元に戻ったのかは分かりません。
『虫の知らせ』というものもありますから。
もしかしたら見えない何かがその時を教えてくれたのかもしれません。