自分で選べない
中学生ともなると、少しずつ、
自分の意見というものを
明確に持つようになる。
あのまま夫と一緒にいたら、
そうはならなかったのだろう。
でも、
幸いなことに別居が実現し、
子どもの意識にも、
少しずつ変化が芽生えた。
ただ、
夫がそれを受け入れない。
父親である自分の言うことが、
絶対なのだと。
嫌がる子どもに、
自分の考えを押し付けた。
中学校に入り、
最初に問題になったのが、
部活だった。
バカの一つ覚えのように、
「運動部にしろ」
と言い続ける。
それ以外の選択肢は、
認めない。
まるで、
運動部に入らなければ、
子どもの未来はない。
そう言いたげだった。
夫曰く、
内申点に響くらしい。
「受験が不利になっても良いのか?」
と脅しをかけ、
ネガティブな言葉を
次々と浴びせる。
「元々出来が良くないんだから、
内申点くらい上げろよ」
これまでも、
そうやって傷つけてきた。
頭ごなしに否定し、
褒めることは、
ほとんどない。
ごくたまに、
「お~、すごいじゃん」
と気まぐれに言うことはあった。
でも、
それさえも、
最後は自分の手柄にする。
俺の言う通りにしたから、
上手くいった。
結局、
『自分のお陰』
というところに帰着させる。
そんなことの繰り返しで、
子どもの自己肯定感は、
少しずつ、
削られていった。
小さな一歩
何度も言われているうちに、
子どもの決心が
揺らぎ始めた。
「パパの言うことも、
一理あるよね」
そう言う子ども。
まるで、
自分自身を納得させようと
しているみたいだった。
それを聞くたびに、
胸の奥に、
黒いものが渦巻く。
あんな父親がいるから、
やりたいことができない。
言いたいことも、
言えない。
けれど、
従うことが絶対なのだと、
長年刷り込まれてきた私たちにとって、
抗うことは、
とても大変なことだった。
『このままではいけない』
滲み出る危機感。
子どもには、
「やりたいことを、やりなよ」
と伝えた。
でも、
気持ちだけでは、
どうにもならない。
夫の問題を、
どうにかしなければ。
そう思い、
私は、
夫に直談判した。
子どもが、
やりたいことを選べるように。
後から、
責められないように。
連日、
根気よく交渉した。
そして、
ようやくお許しが出たのは、
仮入部の時期が
終わる直前だった。






