機嫌の悪い夫が子どもをいたぶり始めた
あの日、突発的な出来事により私たちは急遽家を出ることになった。夫は朝から機嫌が悪った。
でもそれ自体には慣れていたから。
いつも通り、波風を立てないように注意しながら過ごした。
いつもならそれで何となく収まるはずだった。
でも、あの日は違った。
夫は自分のイライラを分からせるかのように執拗な嫌がらせを繰り返した。
何をやっても怒鳴られるので、私たちは部屋の隅でじっとしていた。
食事の時も夫がリクエストしたものを出したのに。
何が気に入らないのがムスッとして箸もつけず。
仕方がないから私と子どもだけ食べていたら、突然箸が飛んできた。
「危ない!」
咄嗟に腕を伸ばして手の平で子どもをガードした私。
多分そうしなかったら当たっていた。
軌道から考えると、恐らく頭の方だったと思う。
これにはさすがに私も声を荒げて、
「危ないよ!何でこんなことするの!」
と言ったのだが、それに対して更に怒ってしまったようだった。
本当は謝って欲しいのに、これ以上怒らせて暴れられたらと思うと怖くて詰め寄ることもできず。
ただ、悲しい気持ちで黙々とご飯を食べた。
子どもも驚いてしまって箸が進まなかったのだが。
夫が立ちあがった後はひたすら私の方を見ながら黙々とご飯を食べていた。
これまでの経験から学んだことがあった。
それは、『ご飯は食べられる時に食べてしまわないと後悔する』ということだった。
あんな状況では夫に捨てられてしまったり暴れて食事どころではなくなる可能性もあった。
だから、生きるために黙々と食べた。
夫が立ち上がったのは自分のご飯を捨てに行ったからだ。
私たちの分を持って行かれてしまうのは困るけど、せっかく作った夫の分を捨てられてしまうのも悲しかった。
でも、悲しくてもいつも通りにしていなくちゃならないから。
全然笑えない状況なのに子どもに笑顔を向けながら、
「早くご飯済ませちゃおうね」
などと話しかけた。
午後になり虐待がエスカレート
ご飯を食べた後もずっと機嫌が悪かった。
なるべく近寄らないようにして、早く機嫌を直してくれることを願った。
子どもにも近寄らないようにとこっそり伝えたが、夫が急に
「お前、ちょっとこっちに来い」
と呼び寄せて、いつものように教育虐待を始めた。
まずは返却されたテストを目の前に開き、
「自分がどれだけバカか分かるか?」
としつこく言った。
子どもはひたすら『はい』と返事をしていた。
傍で見ている私の方がメンタルをやられそうになった。
その言い方があまりにも厳しくて・・・。
本当は口を出したいのに出せないジレンマ。
夫は私が何も言えないことを分かっていて、わざとやっていたと思う。
ようやくテストの見直しが終わり、ホッとしたのも束の間。
今度は家用のドリルを出して、規定時間の半分で解くように指示を出した。
そんなのできる訳がない。
だって、実際の年齢よりも上のものをやらせていたんだから。
当然のように指示された時間内に解くことはできず、
「今日から毎日10時間勉強しろ」
と無茶な要求をつきつけた。
子どもはもう何を言われても『はい』しか言えない状態に。
傍でヤキモキしていた私は、
「もう十分でしょう?」
と止めてもらおうとしたのだが、
「うるせーんだよ!口出すなって言ってるだろ!」
とキレられ、何もしていない子どもの手をパチンと叩いた。
あっと思った時にはもう遅かった。
私に怒った腹いせに子どもを叩いただけ。
それなのに、夫は後から理由付けをして、
「鉛筆の持ち方が間違ってる!」
「姿勢が悪い!」
と怒鳴った。
その上、真っ新の紙に自分で問題を書いて、
「これ解けなかったら、もう小学校なんて行かなくて良い」
と訳の分からないことを言った。
その問題は子どもにとって見たことも無い記号が書かれていて、当然解けなかった。
それを見た夫は、ハァ~とため息をつきながら
「学校意味ないじゃん」
と子どもの頭を何度も叩いた。
今度は私も身構えていたので、間に入るようにしながら子どもをガードした。
一度だけその手が私の肩あたりに当たったのだけれど構わなかった。
子どもが痛い思いをしなければそれで良い。
その後は庇った私を気に入らない夫と言い合いになり・・・。
ちょうど義父が来たところだったので、助けて欲しくて視線を送った。
それに気付いてくれて
「もうその辺にしとけよ」
なんて言いながら止めに入ってくれたのだが、夫の怒りは止まらず今にも殴りかかりそうな雰囲気だった。
このままではマズいな。
そう思って離れようとしたら、いきなり夫が私の肩を掴もうとしてきた。
その手を避けるように逃げて、隣の部屋に移動。
義父が何やら説得していたみたいだが、納得できない夫が私の居る所までやってきて揉み合いになった。
『もう逃げるしかない』
私は子どもの手を引いて、玄関に走った。
背後では夫の怒鳴り声が聞こえた。