終わらない電話
来年には子どもが中学生になる。
まっさらな気持ちで
新しい学校生活を始める。
私たちにとって、
それはとても大きな節目だった。
このことが、
どれほど大きな意味を持つのか。
きっと、
当事者でなければ
理解できないだろう。
夫がいない生活にも慣れ、
共依存という意味も
少しずつ理解し始めた頃だった。
もう二度と戻らない。
そう固く誓った。
『子どもと二人で、
しっかり生きていこう』
そう思っていたのに、
夫の執着は止まらなかった。
それどころか、
日に日に酷くなっていった。
毎日のように電話が鳴る。
出なければ、
何度でもかけてくる。
電話に出れば、
必ず子どもに代わるよう求められる。
拒否すると、
『正当な理由』を要求された。
ここで言う正当な理由とは、
『夫が納得する理由』
という意味だ。
虐待のことを持ち出しても、
本人が認めていない以上、
納得するはずもない。
体調不良を伝えても、
『少しだけでいいから』
と引き下がらない。
結局あの人は、
自分の要求を通すことしか
考えていないのだ。
食い下がる夫に根負けし、
『五分程度なら』
と代わることも多かった。
でも、
絶対に五分では終わらない。
本当に、
胃が痛くなるような毎日だった。
夫の目的
最初は、
他愛のない話をする。
電話口から聞こえる夫の笑い声は、
なんとも白々しかった。
この時間を
楽しんでいるのは、
夫本人だけ。
子どもが嫌がっていることも、
私が苦しんでいることも、
気づいていたはずなのに。
それでも、
子どもの気持ちも、
私の気持ちも、
無視をした。
やがて、
話は決まって
同じところへ戻る。
「パパのこと、
許してくれる?」
明らかに、
子どもの優しい気持ちを
利用しようとしていた。
許せない。
許してはいけない。
そう分かっていても、
その凄まじい圧に、
子どもは追い詰められていく。
段々と、
口が重くなっていく。
最後の方は、
夫だけが話し続ける、
一方的な電話になっていた。
「パパのこと、
許して。
お願い!」
夫はずるい。
きっと、
『許す』
と言ってもらえるまで、
電話をかけ続けるつもりなのだ。
やっとの思いで電話を切った後は、
いつも二人で、
「絶対負けないように、
がんばろう」
と言い合った。






