高校は俺の行かせたい所に
子どもは、進学した中学でそれなりに楽しく過ごしていた。
勉強も部活も、
本人なりに努力して
前に進もうとしている。
そんな風に見えた。
私は応援することしかできない。
疲れていそうな時には
甘いものを用意したり、
気分転換に外に連れ出したりもした。
そうやって、
私たちなりのペースで
奮闘していたのだが。
そんな現状を
快く思わない人物がいた。
夫だ。
夫の前で、不満なんて漏らしたことはない。
困っていると相談したこともなく、
何か問題があると伝えたこともない。
それなのに、
夫はいったい何が気に入らないのか。
今になって考えても分からない。
だが、とにかく夫は
文句を言い続けていた。
「だから公立は嫌だったんだ」
そう言って、さらに、
「高校は俺の行かせたい所にするから、
お前は口を出すな」
と釘を刺された。
……何なの?
何をそんなにいきり立っているのか、
全く理解できない。
子どもは自分なりに頑張っている。
それなのに、
どうして夫の思い通りでなければ
いけないのだろう。
この時、私が心配していたのは
子どもの進路だった。
夫が進路を勝手に決め、
子どもの希望を無視してしまうのではないか。
そんなことにならないように、
できるだけ子どもから遠ざけたい。
ただ、それだけを願っていた。
義実家に行くのは決定事項
あっという間に夏休みが近づき、
夫はある画策を始めた。
突然訪問してきては、子どもに
「夏休みの間、
おじいちゃん家に行こう」
と誘う。
義実家に連れて行こうとすること自体、
困惑した。
それだけではない。
塾から帰ってくる時間を狙うため、
かなり遅い訪問になることもあった。
そんな時間に突然来られるのも、
本当に困る。
でも、面と向かってしまうと
笑顔まで浮かべて対応してしまう。
引きつった笑顔だったとは思うが。
嫌なのに、嫌だと言えない。
弱い私は、
夫を強く拒むことができなかった。
夫は、そんな私の態度を
都合よく解釈したのだろう。
「ママもその間、楽になるし」
まるで私も賛成しているかのように
話を進める。
違う。
私は賛成なんてしていない。
でも、はっきり拒むこともできない。
そんな自分が情けなかった。
それでも、
子どものことだけは守らなければならない。
それだけは、譲れない。
必死に頭をフル回転させて、
『義実家に行けない理由』
を探した。
夏休みには、
部活があるから。
まずは、その理由を挙げてみた。
すると夫は、
「1年なんて、まだ戦力外だろ」
と、あっさり切り捨てた。
「休んでたら、
行きづらくなるんじゃない?」
そう伝えてみても、
「そんなの、おかしいだろ。
もし何か言ってきたら、
俺が学校と上級生に言ってやる!」
と息巻いた。
……本当にやめてほしい。
そんなことをされたら、
余計にこじれるではないか。
子どものために考えているのに、
夫はいつだって自分の考えを押し通そうとする。
こちらが何を言っても、
聞く耳を持たない。
夫の中では、
子どもが夏休みに義実家へ行くことは
もう決定事項のようだった。
いつだって、そうだ。
私たちが拒んだところで、
夫の考えが変わることはない。
夫や義両親の意見を優先し、
全てを思い通りにしようとする。
私たちの気持ちなんて、
最初から考えていないのだろう。
夏休みへのカウントダウンが始まった。
他の子たちは
夏休みを楽しみにしている。
なのに、うちの子だけは違った。
「パパ、どっかに行ってくれないかな」
ぽつりと、そう言った。






