「パパが嫌い」
子どもは、いつもこっそり言った。
「パパのこと、嫌い」
仕方のないことだ。
あれほどまでに虐め抜かれれば、
家族としての情も失う。
そんな「パパ」が、
卒業式に来た。
見つけた瞬間、
心臓がバクンと鳴った。
3人が居たのは、
開放された出入口の外側。
式が終わり、
荷物を持って振り返った時に
見つけてしまった。
思わず身をかがめ、
隠れる私。
見つかったら、
何を言われるか分からない。
みんながぞろぞろと
退場していく中、
しばらく迷った。
行こうか。
もう少し待とうか。
そうこうしているうちに、
だいぶ人もはけて、
ほとんど居なくなった。
こうもまばらでは、
余計に目立ってしまう。
意を決して
出入口に向かうと、
お義母さんが真っ先に気づき、
声をかけてきた。
「いたいた!
こっち、こっち」
夫を見た瞬間、
何とも言えない思いが
こみ上げた。
隠すのが難しいくらいの
拒絶感。
言葉を交わすことさえ
ためらうほどの、
受け入れられない気持ち。
そんな思いが
見透かされそうで
怖かった。
罪悪感をあおる言葉たち
「ろくに会えないんだから
写真くらい撮っておかないと」
繰り返し言われるたびに、
心がざらり。
でも、
気づかないふりをした。
子どもは、一度教室に戻り、
その後に荷物を持って出てくる。
待っている間、
気が気ではなかった。
彼らを見たら、
きっと怯え、
声も発さなくなる。
そんな姿しか想像できなくて、
心の底から
『今すぐ帰って欲しい』
と願った。
だけど、
そんな願いが叶うはずもなく……。
子どもは、
案の定の反応を見せた。
会話を拒絶するような態度に
不満を漏らすお義父さん。
夫も怒りの表情を浮かべ、
お義母さんは饒舌になった。
こういう時、
居た堪れなくなると
お義母さんの口数が増える。
それに呼応するかのように、
夫たちの不機嫌が加速する。
もう、
うんざりだった。
「せっかく来たのに、
何にも話さない人になっちゃったね」
嫌味っぽいこの言葉は、
私への当てつけだ。
無理やり引き離された
とでも言いたいのだろう。
相変わらずの思考に呆れつつも、
早くこの場を収めたくて、
「撮りますよ」
と携帯を受け取った。





