不安
携帯を切ったままだった。そのことに気づいただけで、
こんなにも動揺するなんて。
こんな時、
『まだ夫に支配されたまま』
なのだと実感する。
普通に考えたら、
大したことではない。
それでも、私たちにとっては
決して小さなことではなかった。
夫からの連絡が
来ていないと確認できれば、
ひとまず安心できる。
でも、万が一入っていたら、
一気に不安になる。
怒っていないだろうか。
何を言われるかな。
そんなことを考えたら、
すぐには動けなかった。
電車を乗り換えるため、
私たちは立ち上がった。
ドアの前に立ち、
ガラスの部分に映った自分の姿を見て、
はっとした。
あんなにも楽しい時間を
過ごしてきたのに。
まるで、
自由がなかった頃の自分を
見ているようだった。
ひどく疲れた顔をしていた。
一気に現実に引き戻された。
帰り道
電車を乗り換え、
二人並んで席に座った。
辺りはもうすっかり暗くなり、
遠くの灯りがぼんやり見えた。
次の駅に近づいてくると、
眩しいほどの光が目に入り、
また一つ、
家に近づいたのだと実感する。
朝、出発した時には
ずいぶん遠くまで来たと思ったけれど、
帰りはあっという間だった。
最寄り駅で下車した後、
スーパーに寄り、夜ご飯を調達した。
本当は外食にしたかったけれど、
予算の都合上、仕方ない。
子どもも、
本当は外で食べたかっただろうに、
文句も言わず、
スーパーのお惣菜を選んだ。
お弁当を選んでいる間、
ふと気になって携帯を手に取る。
けれど、画面は開かず、
またバッグに戻した。
それを何度
繰り返しただろうか。
結局、
帰り道では一度も
画面を開くことができなかった。
いや、正確には、
家に入る前には確認している。
『夫に待ち伏せをされていたらどうしよう』
そんな不安があり、
仕方なく、画面を開いた。
あと少しで家に着く。
そんなタイミングだった。
万が一、
待ち伏せされていることが分かれば、
すぐに逃げ出せる。
悲しいことに、
私の頭の中には常に
そんな計算がなされていた。






