返せなかった返事
夜遅くに、ふいに電話が鳴った。
相手は夫で、
用件は分かっていた。
連絡もなく、
突然送られてきた荷物。
中身はお菓子だったけれど、
子どもは食べようとはしなかった。
むしろ、
怖いものでも隠すかのように、
見えないところへしまいこんだ。
父親から届いたものを、
子どもは受け入れられなくなっていた。
だけど、夫からすれば、
『ただ子どもにお菓子を送っただけ』
『子どもを喜ばせようとしただけ』
拒絶されるなんて、
考えもしないのだろう。
要らないとは言えない。
でも、
もう二度と送ってほしくない。
そんな気持ちをどう伝えればいいのか、
言葉が見つからなかった。
考えているうちに、
時間だけが過ぎていく。
そして、
とうとう夫から電話がかかってきた。
こちらから電話をしていれば、
もっと穏便に済ませられたはず。
でも、
それができなかった。
何を言っても怒らせる気がして、
考えすぎるあまり、
身動きが取れなくなっていた。
罪悪感をあおる言葉
恐る恐る電話に出ると、
夫はすぐに話し始めた。
ごく普通の、
いつもの口調だった。
最初は、
全く関係のない話題。
だけど、
すぐに荷物のことを聞かれた。
「届いた?」
その声は、
少しだけ緊張しているように聞こえた。
私は気づかないふりをして、
「うん、届いたよ。ありがとう」
そう伝えた。
夫は、
その先の言葉を待っているようだった。
きっと、
『子どもも喜んでたよ』
そんな返事を期待していたのだと思う。
だけど、
嘘はつけなかった。
言葉に詰まり、
何も出てこない。
数十秒の沈黙のあと、
夫は唐突に言った。
「(子ども)に会いたいな」
それを聞いて、
思わず口をついて出た。
「え、でも一か月前に会ったじゃない」
子どもにしてみれば、
多すぎるくらいだった。
でも、
夫は満足できなかったらしい。
涙声になって、
切々とつらい気持ちを語り始めた。
「お前は良いよ、ずっと一緒だから」
「月に1回ペースだと、
年に12回しか会えないんだぞ」
そんなことを言われると、
少しずつ罪悪感が湧いてきた。
「俺にはもう、
何の楽しみも無い」
そう嘆く夫の言葉は、
私の心を深くえぐった。






